鉢巻についての考察~角隠し・冠との関わり~

現在、一般的に鉢巻は精神統一や気合向上のために用いられることが多く、頭に付ける細長い布あるいは紐の事を言います。実用的な用途としては、運動や調理の際に額の汗を吸収させて顔に垂れてこないようにするといったものもあります。イメージとしては祭礼や運動会などでつけているのが想像しやすいかと思います。

1 鉢巻の起源

鉢巻の起源としてよく例に挙げられるのは、天岩戸神話の中での天宇受賣命(天鈿女命)の衣装となります。天岩戸から天照大御神にお出ましいただく為に天宇受賣命が舞った時の衣装が額にツタを巻いていたことに求められるとされています。月岡芳年の描いた「大日本名将鑑」に創作でこのワンシーンが出てきますが、この中でも天宇受賣命はツタを鉢巻のように巻いているのが見受けられます。この内容のものは所謂、神話の話になります。ただ実際に出土品などからみると、鉢巻の起源は古墳時代頃まで遡れるであろうと考えられているそうです。 初期の鉢巻は神話のように、自然の植物を巫女などが髪に巻いて神々を招く際に装束として用いたものとなります。

2 角隠しと鉢巻

中世(鎌倉中期以降)において武士が戦闘の際に着用した鉢巻は、烏帽子の上から鉢巻を締めてその上に冑を被っていました。これは、上記の精神統一・士気向上に加え、冑の鉢の揺らぎを抑える効果があります。これが鉢巻の語源の一つといわれています。鎌倉以前は、冑も鉢も小型のものが多かったので、必要としませんでしたが、以降は冑が大きくなるにつれ、鉢も大きくなり鉢巻が必須となりました。それにつれ、白一色であったものも紅梅など色鮮やかになっていきました。もう一つの語源が、頭蓋骨の周囲を鉢と呼び、そこに巻いたためといわれています。この鉢をとめることで魂を留め、心引き締める効果に繋がっていったのではないかと思われます。

花嫁衣裳の角隠しも同様に古くは、汗止め・鉢止めの実用的な意図に加え、魂を留め婚姻に臨む花嫁の心持を表したのではないでしょうか。角隠しも鉢巻も同様に晴着で礼装であるとされています。「世界大百科事典」の【晴着】の項目に「…婚礼にもかぶり物が重要視され,花嫁の角隠しは最も新しく,現代も用いられているが,それ以前に綿帽子や〈おかざき〉〈ふなぞこ〉〈かつぎ〉などがあって,かぶり方をやや変えるだけで,吉事にも凶事にも共用する。田植の手拭,宮まいり児の鉢巻,祭りのみこしかきの鉢巻,踊子の鉢巻も晴着のかぶり物で,参拝にも客前に出るにも,かぶり物をかぶるのが作法であった。つまり現代の脱帽の礼の中に,晴着の着帽の礼が残っているわけである」とあります。

3 冠と鉢巻

装束について書かれた「有職故実図典」には鉢巻についての記載が特になく、幘(サク)と呼ばれる纓(エイ)で巾子(コジ)を包み、絹で結ぶ作法があったようです。「冠帽図会」には、古代、冠のへりに紅の絹で鉢巻きをして後ろで結んだものを下級の武官が冠のずれ落ちるのを防ぐために用いたとあり、上述と同様の意図があったものと思われます。日本の皇族においても、重要な神事の際には天皇陛下のみ冠の上から額に白い布を巻く風習が近代まで続いていたとされます。

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